四角
funny collection
un hypnotique
覚書


hi noon
六月の真昼
の街では

ぼくの夢
さえ乾いている

たとえば
四角な孤独
などがここにある

ビザンチンふうに
よろめきながら

たとえば
憂愁のポルカ・ドット
などがここにある

そして
ぼくはすぎなかった

白い円筒
のようにそれは
にみちた
狂暴
であることは

藁の帽子
をかぶり
材木に坐ることだ

の真昼

きらめく
白い波たち

焦げた
女たちを
ぶった切っている

キチン質
一本のフラスコのなか
の青い砂について

ぼくはその朝
郵便でとどいた雑誌を読んだ

四角な水
のなかの古典的な風景とともに

生命の影さえない
完全な荒廃の世界である

ガラスの形をした
細ながい午後

すくなくとも五人は
その人さわがせな岩を見ていた


夏のエピグラム





貝の殻

夏の休暇
若さ

どれもそれだけでは意味がない

poeme blue
卵のなかで
電話が鳴る

Rien
Point
Bien

あまり疲れてしまったので
いいかげんな四角を食べている

秋を
包んでしまうナプキン

MCMLXIV
芸術することはひとつの愚行である
生きることがいちまいのガラスであるかのようにだ

鉛の食器のなかの鉛のオレンジであるかのように
詩が経験の写真であることは
専門的な涙をながす
アルコールのメカニズムでしかない

そしていつも理想の影が
華麗な光線となって
装飾的な孤独の周囲に漂っている
アルミニウムのピテカントロプスでないとすれば
きみは電光に貫かれたドーナツの夢の帽子であるのか

むしろきみはステッキの星について
非常に透明な直線の瞬間にいることを
錯乱した無の壁にむかって
色紙の強烈さで吃ることだ

バガテル
夏のホテル・クレメンタイン

白い髪の毛の夫人が
白い料理のまえに坐っている

ただそれだけの
一八一五年の
夜おそく

フロリダの風に揺れている
ドン・グティエーレ・デ・サルダーニャ伯の黒い旗

the door into summer
その広場には
青い薬を売る三角な屋台が
二十ほど
集まっていた

月がのぼる

すると
ぜんぶ
いきなり半透明になり
消えてしまった

what
what is that

という声があちらの方角から
乾いたエコーと混じりあってきこえてくる

緑の四角な物体から
白いガスが
さかんにたちのぼっていた

鉛とゴムの詩

日曜日はほとんど挫折していた

椅子に腰かけている午後

煙にかこまれたポスト

夜の形をした青いドラマ

本のなかの黒いシルエット

四角いボール紙

細長い珈琲

まるい口髭

眼のある時計

夢の砂

三角の百円

ガラスの部分

アンブレラのなかの何か

c'est un dimanche apres-midi comme les autres
まるい穴のあいた憂愁

ボール紙の会話

ゴムのパイプ

白い線のある一片

絶対の煙

点のなかの散歩

黒いパントマイム

黒い病気

黒いガム

黒い音楽

プラスチックの孤独

黄いろいドット

鉛の箱

un portrait
独身者用のハンガーつき椅子に腰かけて
極彩色で笑っている
マホニー氏の思想もウェストコートも極彩色である

かれの極彩色の哲学には
極彩色の射影幾何学の反映がみられたが
ぼくの白い皿にはレモンと卵がみえるだけだ

マホニー氏にはカリフォニアのコバルト・ブルーの空に侵蝕された部分があり
メルカトル的な曲線でひろがっている
このことについてはメルカトル氏の投影論的注釈をきいてみるがよい

ぼくは極彩色のペンダント・ランプに照らされて
極彩色のシガレットで極彩色の煙をつくっているのであるが

これがぼくの最新のゲイムだよ

極彩色の午後
ぼくの極彩色の退屈も
極彩色のクレメント・マホニー氏の形をしているのである

SF
モレ教授
のちいさい青い円筒
黄いろい
ちいさなメイ氏の三角
なんの関係もなかった

ある
寒い
ガラスのような透明な真昼
のこと

モレ教授の円筒
とメイ氏の三角が
アスファルトの広場のまんなかに
落ちていた

写真家のアルが
それを写真にとり
広場をよぎって帰っていった

それから
いきなり旋風が起こった

四角
コップ

石膏

ゴムのトロンボン

silence and darkness



アルミニウムの四角

ビール
のなか
Monsieur Antipyrine
赤い四角

ガソリン
ネクタイ
四角

funny collection
鉛筆
のなか
の直線の夜

消しゴム
のなか
の四角なニヒリスト

シガー
のなか
のトルコの真昼

手帖
のなか
の黄いろいアリバイ

紙マッチ
のなか
の魔法の指

カメラ
のなか
の廃墟

のなか
の白

un hypnotique
ガラスの一片と
石膏のかけらがあった

それは黒いちいさい
四角な箱にはいっていた

そして
それはいきなり消えてしまった

覚書
詩集 「白の断片」は
造型詩集「moonlight night in a bag」につづく二十四番目の詩集であって
一九六〇年八月から一九六五年一〇月にいたる
六年間の詩の実験の結果をあつめたものである。
この詩集の刊行にあたって白水社の江崎潔氏にレイアウトの協力を得たことを
感謝 したいと思う。

昭和四十八年三月
北園克衛