青いマニフェスト
青い箱
コップの中のドラマ
青い美学
黄とグレイのドット
黒いトポロジィ
improvised meditation
OP.18


antipoeme
純粋詩の極限に聳えている絶対の壁を突破ったところから,アンチポエムの世界がはじまる.かつて詩人は、純粋詩において,所謂・思想・哲学・政治・経済などあらゆる観念的な連帯の世界に自らの思考と想像を拘束することを拒絶したが,その表現(伝達)の様式は変わらなかった.たぶん変える必要がなかったのかもしれない.それは詩の対象が<観念>から<知覚>に変わったというに過ぎなかったからである.しかしこの単純な変化によって,近代詩における最も<華麗な技術>としての技術の王座を占めていた<象徴>の概念はもはや無意味なものとなってしまった.それはひとり象徴ばかりではない.比喩や風刺など,すべて観念のギニヨォルにすぎない詩の技術や方法は純粋詩から分離され振りすてられなければならない運命をもっていた.こうして純粋詩の対象が無意識の領域に移っていくにしたがって,過去にあらわれた一切の詩的技術と方法を支えている諸条件は崩壊していったのである.このような時にオゥトマティスムは,ひとつの新しい可能性を想像させた.しかし,作者が自らをスポイルするような詩の方法は,結局ブルトンの文学的な罠にすぎなかったのである.このことについてはVOU 71号の<fantasy の芸術>というノォトで触れておいた.僕が<創造的空想>の概念を自分の新しい詩の方法のなかに導きいれたのはたぶん1958年の秋の頃であった.そして,この方法によって作られた詩をこれまで書いてきた詩作品と区別するために<アンチポエム>と呼ぶことにしてもよいという考えが,絶えず僕の意識の上をかすめていた.しかしそれにしても,かつて文学史の上にのこされたすべての詩の方法と技術を断絶した世界において,詩が成立するとすれば,その方法も技術も,全くちがった条件の下に展開されているのが当然である.そういう意味において,アンチポエムは,過去に存在した一切の「詩」の制約をうけることはないであろう.したがって,その「様式」もまた自由につくりあげられてよいのである. 
 こういう意味において,アンチポエムは,すでにひとつの「詩の流派」ではない.それはひとつの「詩の新しい状態」であり,詩的認識の新しい次元というべきであろう.アンチポエムはもはや純粋詩と何の関係もない世界で作られそして発展していく詩である.
北園克衛
私はここに
この1枚の白い皿の上に
1匹の驢馬をのせる
驢馬はやがてピストルになり
いつの間にか毛におおわれてしまう

それは広漠とした岩の上に
風にふかれている
そしてたちまち夜になる
髪の毛のながい女が
上半身を岩の中からせりだしてくる

月がのぼる
女の口から黄いろい煙がしずかに流れでる
煙は岩の上に黄いろい塊となり消える
どこからともなくきこえてくる
ジャングル・スタカット

それはしだいに激烈なジェット戦斗機の爆音となり
1枚の新聞紙が落ちてきてすべてのものをかくしてしまう
新聞紙の中央に眼だけがまばたいている
その眼に1本の矢がつき刺さると
眼は1個の西洋梨にかわってしまう

黒い革手袋をはめた手があらわれて矢を抜く
その穴のむこうは果てしもない砂漠である
そこに1人の男が背を向けて立っている
男はたちまち腐り白骨となって崩れてしまう
強烈な風がその散らばった骨の破片とともに視界のそとに吹き飛
 ばしてしまう

青い時間
黒い縞のある箱のなかから
未来が青くながれている

ダァク・グレィの人間が
新聞紙の髪の毛を黄いろく染めている
それは
赤い夕暮れのビィチである

黒い旗が
非常に高いところではためいている

人間が緑の唇にシガレットをくわえてライタで火をつける
ゲルベ・ファルベ

そして世界が黄いろくなる

金属音

ガラスが割れる音

ほそながいスプゥンの影

白い薬品



黄色い箱



金属音



ゲルベ・ファルベ

白い四角の部屋の中で黄いろいガラス瓶から無数の青い蟻があふ
 れている
そのそばに
ひと塊りの灰いろのガスが浮かんでいる

黒いスウェタァとタイツの女は金髪のナレイタァであって意味不
 明の言葉を非常に早口で喋っている

強烈なドラムの連打

ピストルの発射音

閃光・マグネシウムの匂い

消えていくマラカスの音

暗い砂漠がある
最新型のダイムラァ・ベンツが砂に埋まっているそばで
1人の男がヴァイオリンを弾いている
消防夫がホォスをもって遠い地平線のあたりから走ってくる

いきなり白いドアがしまる




青い大きな箱のそばで紫のパンティのストリッパァが立っている
新聞紙が落ちてくる
黒い縞の上衣のカメラマンがそれにピントを合わせている
トランペットが鳴る

青い円筒
それは静かに廻転している

トランペットが鳴る


3

銀色のマヌカンの上に
エメラルドグリィンの月がのぼる

黄いろいパラソルをさしたスラックスの女が通過する
赤いパラソルの女が通過する
青いパラソルの女が通過する
黒いパラソルの女が通過する

1メイトルの白いパイプをくわえた男が1メイトルの青いパイプ
 をくわえた男と1メイトルの毛の生えた1メイトルのスプゥン
 を見ている

黒い新聞紙をひろげて黒い扉にもたれている紫の髭のある黒い詩
 人がいる

それは白い三角やピンクいろの四角などが散らばっている夜のビ
 ルディングの屋上である

突然のブリキをたたく音

消えていくモナムゥル・モナムゥル・モナムゥルといっている女
 の声

弾条のほぐれる音

1個のレモン



ボタン

白い箱
遠いボンゴの響き

白い細長い箱のなかから紫のダンテルがはみだしている
それはビルディングの明るい屋上の夜である

黒ん坊の少年が黄いろい自転車に乗っていつまでも同じところを
 廻っている

新聞紙が空いちめんから落ちてくる

1発ピストルが鳴る

白い細長い箱のなかから緑いろのニュゥドの女がとびでる
赤い手袋をはいたタキシィドの男が
ガラスのパラソルをさしてそれを見ている

1発ピストルが鳴る

空間

青い四角
1発ピストルが鳴る

月が登る

白い巨大な円錐がしずかに回っているそばで

胸に四角な窓のある黒いタイツの女が猛烈なはやくちでしゃべっ
 ている

口紅の車輪について青いトランプについて荒れはてた家具につい
 て凶暴な砂糖について幻影の帽子について長さ1メェタァのシ
 ガァについてねむい100円について絶望のガラスについてひげ
 のある卵について滑けいな砒素について……

1発ピストルが鳴る

四角な窓のむこうは永遠のさばくである

青い円筒


トロンボォンのひと吹き

黒い箱

月が登る

銀いろの巨大な円錐
の上
の黄いろいアンブレラ

8人の白い人間が
8人の青い人間と
8人の黒い人間について話している

鋭い金属音




空間

石油の帽子をかぶる人

アスピリンの煙草をくわえた青い四角

細ながい黒
または黄いろい点

青いながい髪の毛をもったオムレツ

コップのなかの手袋

砂のレモン



消えていく煙のナプキン




クラリネットの甘い旋律につれて「ピンクいろの乞食」という名
 の黒い縞のある巨大な円筒がしずかに廻っているそばで
黄いろいマスクの人間が緑いろの豚の背中をハンマァで叩いてい
 る

ブリキを叩く音

空間




赤い扉が開く黄いろい扉がある
黄いろい扉が開く白い扉がある
白い扉が開く青い扉がある
青い扉が開く黒い扉がある

黒い扉がひらく

青い地平線

青い砂のなかから黒い円筒がせり出す
黒い円筒のそばで3人の男が3枚の新聞紙をひろげて3つの椅子
 に座っている

そして

そしてそれはそれだけのものである




華麗なファンファレとともに黒い箱の蓋がひらく
黒い箱のなかから紫の煙があふれる

荒涼とした砂の地平線

ダイアナが砂のなかから上半身をせりだして黒い箱に矢を射る
すると大きな笑い声とともに煙が緑になりダイアナも箱も煙も消
 える

かすかなマラカスの音

閃光

ヘリオトロォプの匂い

ハイボォル的空間
強烈なブザァの音

青い閃光

詩人の形に切り抜かれた新聞紙が黄いろい洋傘をさして空間を唯
 物弁証法的によぎっていく

1本のビィル瓶が街路に落ちてくる 赤い手袋が落ちてくる 黄
 いろいボォル箱と自動車のタイヤァと寝台が落ちてくる
白いハイヒィルが落ちてくる

いきなりブリキを叩く音

空間

黒い煙草


黄いろいスポォツカァが時速 800 キロで通過する

青い円錐
の上にゆらめく
銀いろの旗

暗い水平線
にむかって
細ながい人間が立っている

消えていくスタカット

白い巨大な箱




ピンクの螺旋から20メェタァのところで青いビィル瓶がころがっ
 ている

黒い縞のあるマネキンについて非常にしずかに話している黒い三
角なラジオがある

緑の新聞紙の上に紫の髪の毛をしたレモンいろのニュゥドが眠っ
ている

閃光

ガラスの割れる音

青いストキッングの5人の女が一直線にならんで通過する



黒い空間




真夜中の街角

青い月がのぼる

強烈な太鼓の擦り打ち

いきなり林檎が1個おちてくる

ひとかたまりの黄いろいガスが2メェタァほどの高さのところを
 しずかに通過する

空間

つづいてシルクハットが通過する

高いビルディングの窓に紫の灯がともる

1発ピストルが鳴る

空間

白い巨大な箱が落ちてくる

the end
遠いガラスの砕ける音

黒い詩集のペェジから憂愁の青い煙がしずかにながれているそば
 で
白い円筒がしだいに灰いろになりしだいにピンクいろにかわる

フランス風の額縁が空から降りてくる

フランス風の額縁の中でフランス風の女がフランス風の眼鏡をか
 けフランス風の椅子に坐りフランス風のハイヒィルをはきフラ
 ンス風の声でフランス風に喋る

エドダンセ タプスティヤンドラ アンニュニフォルム スルマ
 ン デヴィジトゥゥルナクセプトラアンヴィタンション ニコ
 ンプリマン・レセデュクトゥゥルエカルトラ サントゥファシ
 ェ メフェルマン

フランス風の額縁の中フランス風の女フランス風の眼鏡をかけフ
 ランス風の椅子に坐りフランス風のハイヒィルをはきフランス
 風にいきなり消える

空間

黒い空間

遠いガラスの砕ける音

黒い箱
ガラスの砕ける音

赤いドアが開く
1人の女が金属的な声でしゃべりながら現われる

新聞紙が1枚
空から落ちる

1本の巨大な青い煙突からピンクいろの煙がはげしく出る

1発ピストルが鳴る

金属的な声の女が消える
赤いドアが閉まる

いきなり世界が黒くなる

はげしい太鼓の音

空間

青い直線
いきなりピストルが鳴る

ピンクいろの口髭の男が
三角な窓にあらわれる

ガラスの月が登る

「人生」と書いた巨大な黒い箱
のぐるりと
1匹の緑いろの豚がいつまでも廻っている

アスファルトの街路に
乾いた音をたてて1本の手が落ちる

三角な窓
のピンクの口髭の男が
あわてて窓をしめる

金属的なはげしい笑い声

1発ピストルが鳴る

青いマニフェスト


非常に軽い金属音

窓のない白い部屋のなかにバミリオンの毛をもった
軽金属の女が立っている

部屋がすこしずつ暗くなる

意味のわからない言葉がすこしずつ高くなるにつれてテンポがは
 やくなる

マグネシウムの閃光

白い煙とともにすべてが消える


2

軽金属の女が黒い長い壁にそって歩いていく

シガレットをくわえた3人の男がそれをいつまでも見ている

暗い灰いろの地平線

3人のシガレットをくわえた男がいきなり溶けていく

1列の長靴がだらしなく砂の上を横ぎっていく

世界がますます暗くなる
やがてすべてが暗黒のなかに消える


3

クラリネットが鳴る

そのメロディがシドニィ・ベッセの「小さな花」であってもよい
 ドワニエ・ルッソォの日曜日の午後であってもよい

際限もなく青い砂漠の風景がある

1本のピンクの旗が上空にちいさくはためいている
レモンの月が登る

巨大な箱のなかから偽物のパイプをくわえた偽物の詩人と偽物の
 批評家が「パントル・チンパンジィの大成功」という名の藁の
 チョッキを着てあらわれる

鋭いトライアングルの響き

いきなり砂のなかから黄いろいラウドスピィカがでている
歯の浮くような金属的な声で放送がはじまる
<この放送は省略>

シムバルの激しいひと打ち

青い箱


いりみだれた鋭い発信音

三角なビルディングの上の四角な星

巨大なレモンにもたれた銀いろのニュゥド

いきなり消えてしまうテェブルの上のビィル瓶

黄いろい物質が一瞬 空間を通過する

廻転する1枚の新聞紙

群集の声がだんだん高くなり やがて金属的な騒音に変わっていく

長さ50センチほどのシガレットをくわえたアパッシュがいそいで
 くる

ガラスの砕ける音

一瞬 アパッシュが消える

黒い空間

群集が走る乱れた足音




ひくいドラの音

深夜のビル街を人間の形に切りぬかれた新聞紙が歩いてくる

街路のまんなかにテェブルがある
テェブルの上に皿とフォクがある

オフィスの2階の窓から髪の毛の長い女が上半身を逆さに垂れて
 いる

街路の上に1冊の本が開いたままになっている

ピストルをもった1本の手の影が白いカァテンに映っている

1本の開いたアンブレラが5メェタァほどの高さのところを静か
 に移動する

ポストの上に黒いハイヒィルがのっている
ハイヒィルが消える

短剣が突きささったトランクがある

アスファルトの上のおびただしい血痕

シルクハットをかぶり インパネスを着たモノクルの男が街角を
 まがる

THE END
と印刷した1枚の紙が街路に落ちてくる

コップの中のドラマ
強烈なブザァの音

青い閃光

強烈なジャングルスタカットの音につれて黒いマネキンが砂のな
 かからあらわれる

黒いマネキンの黒い首と黒い脚
黒いマネキンの黒い手が黒いピストルを発射する

遠くの方でガラスの砕ける音

穴のあいた巨大な青い箱が象徴的に落ちてくる
青い箱の穴から
黄いろい煙が哲学的にながれている

詩人の形に切り抜かれた新聞紙がピンクいろのアンブレラをさし
 て空間を思想的によぎっていく

1本のビィル瓶が街路に落ちてくる赤い手袋が落ちてくる黄いろ
いボォル箱と自動車のタイヤァと寝台が落ちてくる
白いハイヒィルが落ちてくる

ラッサの月が唯物弁証法的に登る

いきなりブリキを叩く音

空間

非常に
ハイボォル的な空間

青い美学
青いフリュゥトが鳴る

ちいさい四角な窓
のある青い巨大な円筒がならんでいるそばで
金髪のニュゥドの女
が寝そべって煙草をすっている

青い煙草のけむりがちいさい四角な窓からながれている

ふたつの四角な窓に白いマスクのような顔がしずかにあらわれて
 しずかにきえる

ながい反響をもっただるい笑い声

鎖をまきあげる音
とともに赤い巨大な月が登る

金髪のニュゥドの女
が月を見る
あわてて煙草をなげつける

月が消える

遠いガラスの砕ける音

空間

黒い空間

黄とグレイのドット


だるいドラムの連続音

黄いろい巨大な四角

白い円筒の上の細ながい軽金属の旗

3人の黒い男

紙の月

だるいドラムの連続音




3人の黒い男3本の黒いアンブレラをさし3つのスツゥルに坐り
 3本のビィル瓶からビィルを飲む

紙の月

黄いろい巨大な四角

白い円筒の上の細ながい軽金属の旗




だるいドラムの連続音しだいに強烈にはやくなる

3本のビィル瓶からビィルを飲む3本の黒いアンブレラをさし3
 つのスツゥルの上の3人の黒い男いきなり消える

黄いろい巨大な四角いきなり消える

紙の月

消えていくだるいドラムの連続音

黒いトポロジィ
トランペットが鳴る

巨大な月が登る

黄いろいニュゥドの女が黒い四角な手袋をはめて新聞を読んでい
 る

たくさんの瓢箪の形をした巨大な雲が流れる

遠くの方でガラスの砕ける音

突然
黒い四角な手袋をはめた黄いろいニュゥドの女がしゃべる

黒い卵の形をした室内・黒い肘椅子・黒い夜・黒いポンテヤック
 氏・黒い肘椅子に坐り・黒いスリッパをはき・黒い暖房のそば
 で・黒いパイプをくゆらしながら・黒い新聞を読んでいる・黒
 い眼鏡をかけ・黒い口髭・かたわらに黒い肘椅子に坐って・黒
 い女性ポンテヤック夫人が・黒い靴下をつくろっている・黒い
 沈黙がしばらく続く・黒い劇作家イヨネスコ氏が・黒いプロセ
 ニアムにあらわれる・黒い声の挨拶・黒いスツゥルの上の皆さ
 ん・黒いマァケットの皆さん・黒い私の黒いドラマが・黒い詩
 人サム氏の黒いエスプリによって・黒いポエムになってしまっ
 たということを黒いラジオで知りました・黒い私はサンキュゥ
 であります・サンキュゥ・黒いサンキュゥ・この黒いシアタァ
 から・黒いサンキュゥをおくります・黒い人間の黒い拍手・黒
 い声・黒い時計が黒い時間25時を打つ

巨大な月が登る
しかし巨大な月はこのポエムのはじめのところですでに登ってい
 たことがわかったのでいそいで巨大な月を降ろす

トランペットが鳴る

黒い四角な手袋をはめた黄いろいニュゥドの女が新聞をひろげて
 読む

たくさんの瓢箪の形をした巨大な雲が流れる

遠くの方でガラスの砕ける音

いきなり瓢箪の形をした雲が消える

高い空から黄いろい縞のある巨大な箱がしずかに降りてくる

白い箱のなかの群集のかん高い声

箱のなかから黒いスラックスが投げだされる

アナウンサァの金属的な声

「エグジスタンシヤリストのあご髭」

箱のなかから青いぼろぼろのコンビネイションが投げだされる

アナウンサァの金属的な声

「アングリィ・ヤングメンの哀歌」

箱のなかから赤いパンティが投げだされる

アナウンサァの金属的な声

「ビィトジェネレイションの朝めし」

箱のなかの群集の声やむ

空間

緑のアンブレラをさした2人の黒ん坊が通過する

空からたくさんのシルクハットが落ちてくる

空間

黒い空間

アナウンサァの金属的な声

「つまらないからやめよう」

improvised meditation


Ya
Yah Hoh

白いジャンパァを着た赤いスラックスの女 黒いマスクをつけた
 シガレットをくわえ青いロォプにもたれている

Yah Hoh

巨大な紫の月が登る

強烈なシムバルの音

紫の月が際限もなく大きくなっていく

白いジャンパァを着た赤いスラックスの女黒いマスクをつけシガ
 レットをくわえ青いロォプにもたれ巨大な紫の月にむかい巨大
 な白い箱について金属的に喋る

それはそれだけのものである それはそれだけのものであるだろ
 う それはそれだけのものでなければならない それはそれだ
 けのものであった

強烈なシムバルの音

Ya
Yah Hoh



空間を非常なスピィドで何かが通過する

黒いニュゥドの女巨大な白い箱を破って出る

空間を非常なスピィドで何かが通過する

黒いニュゥドの女青いロォプにもたれていきなり消える

空間を非常なスピィドで何かが通過する

黒いニュゥドの女黄いろいパラソルをさし巨大な白い箱のなかから
 あらわれるいきなり消える

空間を非常なスピィドで何かが通過する

黒いニュゥドの女黒いトメトを持ち黒いトメトのための黒いトメト
 の唄を歌ういきなり消える

空間を非常なスピィドで何かが通過する




ブラッシング・ドラムの音

新聞紙のベレをかぶり新聞紙の口髭のある男新聞紙のコォトを着
 て OUTSIDER と書いたプラカァドをもって空間をななめ横によ
 ぎっていく

Ya
Yah Hoh

ベレの新聞紙をかぶり口髭のある新聞紙の男コォトの新聞紙を着
 てプラカァドと書いた OUTSIDER をもって空間をななめ横によ
 ぎっていくベレの口髭をかぶりプラカァドの男 OUTSIDER と書
 いたレインコォトをもって空間の新聞紙をななめ横によぎって
 いく口髭のベレをかぶり男のプラカァド OUTSIDER の空間を着
 てレインコォトをななめ横によぎっていく

黒いニュゥドの女
穴のあいた新聞紙をもちガラスのフィラメントのような声で喋る

天国をごらんになりたい皆さまおはやくどうぞ
神様にご趣味な皆さまおはやくどうぞ

ブラッシング・ドラムの音しだいに激しくなる

おそれいりますが暫らくおまちくださいませ
あらごめんなさい
ほんとにこまるわ
でもやっぱりコマァシャルはつづけなければ
ビジネスですもの
ビジネスだわ

マグネシウムの閃光

どうぞおいそぎになって
天国も新聞紙の穴もひとつきりでございます
おしずかにどうぞ
おさわりにならないで

マグネシウムの閃光

空間

黒い空間

OP.18


白い手袋白いジャンパァ白いスラックス白いブゥツの白い女白い
 キャタツの上に坐り白い長いシガレットホルダァで煙草を喫っ
 ている

コンガのひくい不規則な連打

白いキャタツの上の白い女ひだるい声でだらしなく喋る

美粧院
ワックスの匂い
スプゥンの上の青いランデブゥ

アン
デュ
トロア

非常に客観的に
ほとんどドキュメンタルな態度・方法・技術それはリアリズムと
 いうようなものではなくむしろ象徴的なムゥドが漂っている
それはまた人物の設定にすでにその傾向があらわれている
おわかりになる

きまりきった文句
ある晴れた日に
黄いろいパラソルをさした謎のような女
扉に絶交を宣言したすぐあと
作者の偶然・非情・非心理の観念をここにみる
わたしはチャンスなどない方がいいわ
おわかりになる

欲望をいだき
ともかく自分の車にのせることに成功
女はガスを消しわすれ
エア・タァミナルなら鉄道よりもっともうかると考え
アルフレッド・ヒッチコックの境地であるがかれらの現代意識が
 あらわれている
おわかりになる

まったくでたらめな話だ
昼食前にこういう臆面もなくそんな口がきけるとは
一抹の暗い影をなげ
幸福な瞬間に
えっ
おせんにらむね
忘れられなくなっちゃった
あんぱんにあいすくりいむ
見向きもしない横顔
これは美の権化として登場しているのである
おわかりになる

日に何回も
いわば謎のような女
なにかしら気違いじみたじみた
そして胸を刺すようなものに変貌させられている
遠い過去の笑うべき断片を通して
突然虚脱したように消えてしまう
観客の老婆は拍手かっさいして老人に接吻し
赤ん坊をあやすように老人をほめたたえる
ベルが鳴り
老人がドアを開ける
水にかこまれた塔の中の部屋
疲れ果てた夢や色あせた思い出で一杯の部屋
なにかが脆いかすかな音をたてて壊れていく
おわかりになる

強烈なグリッサンド




非常に弱いフルゥトのながいながいひと吹き

青い破漠の風景

黒いジャンパァ黒いズボン黒い巨大なトランクをもち黒い眼鏡の
 黒い男黒い椅子に坐りものすごいジェスチュアとエロキュゥシ
 ョンで喋る

黒い円筒の中の黒い円筒の中の黒い円筒の中の白い円筒の中の黒
 い円筒の中の黒い円筒の中の黒い円筒の中の赤い円筒の中の黒
 い円筒の中の黒い円筒の中の黒い円筒

1人の女がその心の中に1匹のサソリを飼っていた
しかし本当にそのサソリはいたのだろうか
現代のニヒリズムをいかに展開すべきか
波・ボォト・ベルの音がひっきりなしに聞え見えないお客に見え
 ないプログラムを売ってあるく
色彩をしめす形容詞が名詞のあとにくるという原則はどこにでも
 書いてある
だが
なにげなく見すごしてきたところにもかえって問題があり
八百屋の店先につまれた果物の数はいつの間にかへってしまい
ほのかな薄あかりがのこっている西の空にはその女と結婚したい
 という希望を村人たちに宣言しているのである
それは健康の熱病であり理性の狂気である
内容は奇怪な形をした天然の石からはじまって
自然の背後にある何ものかの優美さ
湿った背の高い声
写真はこういう弱点を立派にカムフラァジュしているのである
ビィル瓶の砕ける音

軽いヴィヴラホンのひと打ち




ギロの音が突然に痙攣的に鳴る

巨大な緑の四角緑の円緑の三角緑の輪緑の円筒が静かに廻転して
 いる風景

非人間的な声アクセントとテンポの男と女の声

私がなにを見ようとしていたのかは知らない
そのとき私はいっさいのことを思い出した
腰の高さあるいは胸のすぐ下につけられる黒いスエェドのコルサ
 ァジュ
しかしそういったものを私は期待していたわけではなかったので
 ある
木の葉が黄金いろに変わっていく街路樹の下をあるきながら
そこに奇妙な矛盾した孤独があり
発作的に車をとばしてすべてが崩れ去った絶望へと暴走する場面
 を連想しながら
いまわしい過去の象徴ともいえる手帳を出したり入れたりする
虚無的な午後7時のグロテスクな臭い部屋
一定の条件がみたされると他の子音に変化し
ファンタスティックな作品を具体的に解決する
しかも髪の先端を頬に密着して
錯覚の効果をねらう
去年の夏とつぜんに
斬新な角度から追求されなければならない
深い憂愁にみちたコレクション
見るものにとっては一瞬も眼をそらせない構造とスピィド
夏の薄闇が老朽した3階建てのホテルから見える
おそらくはこれは不運というものではない
入口に通じる階段に軽い足音がきこえ
尖塔の先が何かを予言するかのように星を指し
星はパンタグラフのあたりをさまよう埃の雲にさえぎられて微か
 にきらめいている
焦点をまさぐる彼の視線に333局をよぶ電話器があった
人影がガラスにうつり
彼の口もとは嫌悪でひきつっている
彼はしずかに部屋をよぎり本の題名を見る
蒼白い焔が不気味なすじになって流れる街路に向かって
両眼が死にかけている鳥の眼のように開かれて閉じられた
一瞬 稲妻のように
それらのことが心の中にすみずみまではっきりと浮かびあがったの
 である
おあつらえ向きの時間である
S字形にくねるコンクリィトの車道をのぼり
深い沈黙の中に
彼の巨大な影が先にたって歩いていく
女はもう動かなかった
焦点をまさぐる彼の視線に6666番を鳴る電話器があった

ブエナス・ノオチェス

骨の髄までナンセンスな内部問題をいろいろと研究した
昼の終りを夜につなぐこのプロムナァド
限界についての疑いがはっはりと与えられたにもかかわらず
その長さは計算することができない
男の手は暖房用のコォドをつかみ
静かにドアをしめる
ちみつな優秀なマッスの手のとどくところに
つかれることもしらず存在する物体をみつめる
空虚な表情を顔にうかべて
両手にジンの壜をもって家具にぶつかりながらピアノによりかか
 り
革のジャンパァのポケットからハンカチをとりだしながら言う

あんた
めずらしいところで逢ったわね