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朝の手紙
夏はお洒落なポエムの季節です
グロキニシアの花の蔭で
あなたの手紙は読んでしまつた
ホテルの甘いゼリイのやうに
お! ボンジユウルも言はずに雨が降る

驟 雨
友よ またアポロが沖の方から走つてくる
雨のハアプを光らせて
貝殻のなかに夕焼けが溜まる

貝 殻
少年達は詩のやうに貝殻をならべた
熱い砂の上に
それで詩人達は膃肭にすぎなかつた
正午の空が雲のナプキンをつけると
松の葉がパセリのやうに波の間に見えてくる

夏の夜
Cher ami
月草が咲くヴイラの庭でメロンを食べよう
  
どんなに愉しい訣れのときが
僕たちにやつて来るだらう!
   
山の端に月が出ると
海は一枚のレコオドのやうに光つた

田舎の食卓
朝の食卓で寝坊の僕を待つてゐる
この固いアンベロップには宛名がない
封を切ると
いきなり昨日の太陽が出てきた

イラ草が山羊のお尻で温まる
若木に雲がからかふ初夏の村で
村長さんの口髭がトンボの翅のやうに光る

雑 魚
その小川の水は芹の根を洗ひ菫の茎を洗つた
裸の少年達は茨の叢の中からココア色の肩を
出して口笛を吹く
その小川の岸には榛の木の林が続いてゐて
青葉の下を砂金のやうなモロコが走る

少 年
あるひはその小川の流れに沿つて桑畑が靡い
てゐて
犬も少年達も万年筆を食べたやうに青い舌を出す
この少年達はてんでに蕗の葉をささげてゐたが
その蕗の葉のなかで桑の実がチヤンピオンインク
のやうに光る

夏になるとその小さな橋は菫やたんぽぽや
紫雲英の花が咲いて美しいアアチになる
その花のアアチの下を小川が流れ
自転車がアアチの上で天使の羽根のやうに光る

藪の向うをマンドリンのやうな雲が通る
一日中少年達は水の中で西瓜のまねをする
藪の中で蛙がいきなりネヂを巻く

柿の葉が銀行員の頭のやうに光る
豌豆畑の道で
村で一人のアルチストが怠けてゐる
けれどもこの貧乏画家の雲のパレットは
煙草を喫ふ間も変色してゐる

叢 林
青葉のトンネルを小川が流れ
太陽が帽子のなかに坐る
叢林の少年と兎がブロンズのやうに光る

茨のヤブの上に卵のやうな雲が出る
榛の木の下の自転車屋から少年が胡瓜を齧
り乍ら出る
トンボの翅と胡瓜とヤブに風があたつた

少年達が麦畑のなかを風のやうに散歩する
その麦畑からは村も遠く水車場も遠い
かれらはトマトのやうに頬をふくらませ
白いシアツに汗をかく
頭をあげるといきなり雲のなかで雄鶏が鳴く

郵便屋
午前十時きつかりになる
郵便屋が桑畑の道を歌つて来る
自転車のベルに合せて
するとキリギリスがあはててドアを開ける

正午になると牛も堤に上つてくる
農夫達はいつまでも苗木にこだはつてゐるが
この進行する岩は菫のパンにタンポポのバタ
を塗つて洒落た食事をする

理髪店
土用に入る
散髪屋が欅の木の下で仕事をする
サアボンの匂ひが村一杯に流れる
真桑瓜のやうな頭にニッケルの鋏がトンボの
やうにとまる

土 用
少年たちは石のやうに固い頭に汗を出す
一匹の蜥蜴が雑草の上でゾリンゲンのナイフの
やうに跳ねかへる
楓の葉の下で小川の水がゼリイのやうに顫へる

太 陽
蝉は熱い石の中にもゐる
焦げた背中に蜂が一匹
午後は農夫も蛇も苜宿のなかで眠る
すかんぽの葉に風がまきつく

紫蘇畑にも夜がくる
月が登る
柿の葉が小波のやうに光る
提灯の手風琴で少年達が瓢箪のかたはらで
唄ふ

間 道
僕は灌木の間を登つていく 僕は光りと汗の
中で徐々に衰へる 今は女郎花の群れをス
テッキで叩きつける気力もなく すると両側の
茨の中でキリギリス達がいそいでネジを巻い
て呉れる 僕は時計のやうにまた一頻り馬力
をかける

スカンポ
晴れた空は塗りたての青いエナメルだ とき
どき風がセロフアンのやうに光る 足の下の
方でガラスのやうな音を立てて水が落ちる 
鶯がフリユウトのキイを間違へてしまつた
スカンポを折るとラムネの栓を抜くやうな音が
する 僕はちよつと菫の花に唾を吐き それか
ら中学生のやうにそのスカンポをパリパリやる

電 車
線路のなかに山百合の花が咲いてゐる 十五
分おきに若い運転手が白いボギイ車を動かし
乍ら鼻歌に合せてベルを鳴らして来る  車の
中でマドモアゼルがたつた一人カアネイシオン
のやうに揺れてゐるのを御覧!

ソオダ フアウンテン
マダムは巴里がお好きです 羊歯の葉のなか
でプレエンソオダ水を飲むと胃病になり易い
アルプスがドライアイスのやうに蒸発してゐる
のでなかつたらキヤンプ長屋でございます
ダミヤのレコオドがくたびれてダミてしまつた
僕はここのマダムが癪さ