インクの蛇
アスピリンの鳩
明るいシヤボン
白いドクトリン
一直線の頭
朝のビナクル
午前の肖像
固いパルク
ヒヤシンスの季節
新しい土地
半透明のカスケツト
溶ける貝殻
明るいドリアン
鉛のラケツト
泥のブロオチ
生きたキヤンドル
鉛筆の生命
休暇のバガテル
透明なオブヂエ


悪い球根

踊子の肖像を鋸で破り
その周囲にコンクリイトの雲を積み上げる
針金で荷造りされた牛と泥のトランクが客間に到着する
骨のステツキに貫通された書物が投げ出される
枯れた柳の下の錆びた自動車にもたれた
若い時計屋の頭に雨が降つて来た


アコイテスの歌

明るい春の午後
僕は大理石の道を歩いてゐたが
憤怒は茨のマントを着た哲学者の影であると思つた
それから蝋燭台の形をした珈琲店に行き
解剖学について話した
おお 解剖学とトマトについて話した
透明な靴をはいた顎の細い女がテイブルの上にチイズで詩を書いてゐた
その詩は亀のやうに心を暗くした
僕は亀の足の形をした匙で砂糖の重さを量り
同時に神の重さをも量つてゐた


透明なグロテスク

窓硝子は夜の空気とともに凍つていつた
アスフアルトの上の氷の百合の花とともにあれ
眼には兇暴の光を漾はせて
かつてウバンギの流域をさまよつたボポトの領袖たちのやうに
暗澹たる希望のなかでリフトに乗る
白いスクエアとその遠近
死の抽象は常に滑稽である
かつて円筒のスピイドを愛し
今日の午後
鉛の手袋をはきパインアツプルの頂点を叩くものは愚劣なるかな
彼らは暁明の風のなかで陰惨と古代のロオルパンを喰へ
それは充分に退屈である


緑のアクシヨン

軽金属の手袋を脱ぎパパイヤの実を食ふことが希望である
緑のステツキを肩らの上に光らせよ
僕達は充分退屈した
エアフロオの固体は垂直に水液の中へ行く
かつて新時代のために闘つた詩の戦士たちの遺蹟は
窓硝子の夥しい穴のなかに在る
彼等は憂鬱の十字軍であつた
鉛のパイプをくわへ刷毛をすべての書物に当てよ
希望はバツタイの大河をくだり鰐の歯の稜角を磨いた
僕達の白いシヤツの生地はリネンであるかポプリンである
田園の早朝になかば竣工したダムのある風景のなかを歩いた
かつての直線的イデエは地層の断面を作つた
巻雲のスピイドをもつて白昼の山岳に銃器を曝らせ
僕達の祖先タイヤルは雑草の陰に牡鹿とともに眠つた
それらの詳細を鋼鉄の文明のなかに投げ入れよ
容赦なく発砲することが重要である
シヤンデリヤに贈る限りなきガラントリイはそれである
樹木の皮膚のなかのメランコリイのために彼等はすべての必然性と戦つた
それは充分退屈であつた
僕達は時代の裂け目のなかに希望を投げこむ
頬にはすでに祖先の怒りと孤独とを鮮やかに甦らせ乍ら


Uボオトの線

ハツチを開き
鳩とヒヤシンスについてメロデイをしたたらす午後
汝の靴は白くパンツも白い
と言ふことの非常な電話のために僕は居る
汝はポオロ島の岸に沿つて
昨日の波と憤激の曲線を描き
僅かに一本のシガレツトの時間をその衰へた鴎とケビンのためにのこして置け


硝子のコイル

       1

昨日僕達はコンクリイトのアンブレラの下でトマトの軽率を嗤つた
彼等の思想はすでにバケツのかたはらで腐敗し縄のネクタイについて語つた
砲弾はオフイスの上空でキヤベツの如きものである
友よ それで踵はよい

       2

今日 かれらは Philosophismus のブラツシの中で一匹のアヒルを発掘した
僕達の嗤ひはアクイナスの胡瓜型の思考よりもダクシヤンド的シリンドルの状態に近い
緑の手袋をはき Memburanologie といふ書物を抱へて出発する
明るいカバンを売る店はあるか

       3

明日僕達は野菜の衣裳を着た予言者のためにバケツの横で重いネクタイを結ぶだらう
退屈な市街はブラツシのごときものである 去れさまよへる頭よ
ガイスレル氏の管を通り
岩石の上に炸薬のごとく憤然と去れ


インクの蛇

       1

茨の藪を歩いて
巧妙な雲を憧れる
太陽はボタンをたんぽぽ色に染め
下駄をはいた君の恋人を喜ばす
森は霞のなかにキヤベツのごとく光る
頭は菫のやうに痛い
頭髪よ
薔薇の原始よ
海の岩に刻まれた太古の車よ
雲雀の鳴いてゐる川のそばに
少年達は笛を吹き
やがて怠けて水の中に頭を漬ける

       2

百合の模様のついたシガレツト・ケイスをひらき
カンボヂヤの写真を見ながら
茫然と鉛筆を削る
頭のなかは魚のために光り
ランプのごとく揺れる
蜂のやうに階段のそばでささやく者よ
来たれ そして眠れ
この破裂したポケツトの永遠のために夢みよ

       3

林檎の葉らは雨のやうに光る
それであるから農夫も雨にぬれて
羊とともに石の上に醒める
愛の天使はダニエル・ダリユウのごとく
不思議なブランコに乗り
ビアズレイのやうに哀しい
灌木の下に行き
軟い風のごとく頭を鳴らし
忍冬の上に時計をのせて考へる
熱烈な生活について
それから
すべてを
アムウルよ
杏子のごとく起きよ


アスピリンの鳩

革の円筒に
軟風のごとく坐り
ナイフと木綿とガスについて
青年と話した

くねくねした太陽は
砂の上を過ぎて
木綿の底を照らし
コルクのやうに死ぬ

僕はヘンリイ・ムウア的空間について
不定形に語り
菫の垂れた箱を眠らせる
一群のシヤボンが漂ひ

青年のために
ナイフは非常に過ぎ去つた
水筒とコンクリイトと
肥えた溜息を送れ


明るいシヤボン

赤いピンセツトによつて
かれらはガラスの上に生誕した
栗色の文字に憧れて

さよなら
かれらはどこに
その半透明の切手を貼つたか

今朝
紫の手袋をはいた牛乳屋が
自転車でプウルの横を走つてゐた

さよなら
不意のレアリテたち
僕は毛皮のクラヴアツトを秘蔵した

むかし昔
かれらの長い嘆息の上に
細い無限のコイルがあつた

イタリイに居る
私の親愛なるラパロの賢人よ
そして僕のためにも


白いドクトリン

風が吹くと僕は銀行の柱廊を歩いた
僕の影が葡萄の樹のやうにくねり
それにつれて僕の思考も葡萄の樹のやうにくねつた
軽い雲は破風のあたりに垂れ
鶯が帽子の箱に卵を生んだ
金モオルで飾つた門衛が鶯と雲の間で発砲する
白い煙が僕の腕時計の上に流れ
鉛筆で描いた円筒の中へカアネイシヨンのやうに漂ふ
それはロココの再発みたいだ
ネクタイは非常に短くなり遂に鋏で切り取られてしまつた
僕はドアをひらき鶯の生長を讃へる
僕はドアをとぢて鶯の生長を讃へる
コツプは苦く
いま亜細亜は髭を剃つてゐる
シヤボンの泡の量によつて
ニユウスの価値が高低し
やがてフリイジヤの一本に波及する
僕はながい間その一本のフリイヂヤに吊り下つてゐた
「ダンサアの手袋」 といふ理髪館は僕の踵の下にある
菫色のズボンをはいた紳士がブラツシで
いきなり電球に墨を塗る
星とペリカンとチユウインガムが意外なコンビネイシヨンで
パアコレイタアとスパナの向側に投げ出される
僕はアンブレラと卵の永遠のために
軟らかな縞を横切つて明るいギヤラリイの方へ帽子を振る


一直線の頭

明るい叢林のなかで
一匹の蛇が光りの鞭のやうに反りかへる
七月の朝
軟風がヴエランダの帽子と太陽を
鉛のやうに重くする
新しい時代の舌は
金網の柵に沿つて喋り
軽い思考が遠いホテルの破風のあたりに漂ひ
南瓜畑の道をいそいでくる
町に出て
水を撒いた石畳の上をあるき
ヂヤスミンの匂ひと新しい自転車の匂ひに遭遇する
Bonjour Beranmee et Madame
木製の帽子と鉛のベルのそばで
シヤツは苦しく
熱い砂の上に出て横になり
海の微かなガラス瓶の音をきく


朝のビナクル

透明なアクイナスが
食器箪笥の前で
髭を剃る朝
ポンプの上の
雲の影らは短く
忍冬の径を右に折れ
光る
葡萄の丘に
しやくれた思ひをひき
鶯の液体とともに
不正確に揺れる


午前の肖像

太陽のガラスは
ニツケルの手摺に沿つて光り
小さなポケツトのなかの
僕のコイルは軟らかに
ほぐれてゆく朝

金網にもたれて
シシリイの海と
新しいイオンを思ひ
僕の踵は
ナフタリン球のやうに光る

Terebra toroquata の如き
思考の線は

僕のタイプライタアの上の
石膏の眼に属してゐる

磨かれた日の雲のやうに
古典に近い
釦のやうな人よ
水滴の
思ひとともに


僕はシヤボンとコツプを
タイルに置いた
純粋な日日のやうに
軽いプロペラアの響きにみちて


固いパルク

遠いキヤベツの上を
見えないコルクが飛び
ストリキニイネの瓶が砕ける
葡萄の門は
すでに手帖の表紙である
雲と砂糖
僕はガンベツタの脱走に憬れ
磨かれたガラスを横切り
風化した階段の影を見た
その細長い距離とともに揺れ
卵は直線に沿つて廻る
この軽い円錐の背中を
一撃の鉛として装填する
すべての音の混同が
ゆるい午後の切線となる

スナツピイな貝殻のひと光り
会話はボタンとともに乱れ
瓢箪の曲線をすべる
翼あるネヂ釘のために
熱い斜面の突起を計画し
僅かな石膏の先端に靠れ
いそいで溶解する

それはひとつの嘘言のやうに
軟らかな管をのぼり
水上機のやうに
濡れたコルクの上に
軽くただよひ
蒸発する


ヒヤシンスの季節

涼しい眼鏡をかけ
朝のミルクを飲み
シガレツト・ケイスの中でのやうに
白い思考をととのへる

風は緩慢に
太陽とセアタアの街を
吹き
日日のノオトは
透明な amitie にみちて
すでに時計は
思ひ出の
微かに揺れる夜を指し
閉ざされた眼と眼のあひだに
南方の熱いストオロベリイが実つた


新しい土地

新しいプウルのそばで
コルク抜きを夢みる
黒ん坊たち
ジンジヤの花が
ボンヂユウルも言はずに
咲いてしまつた午後
僕は牛乳瓶の横で
タンガニカの強烈な蟻を見た

未だ十一歳の黒ん坊たち
その精巧な頭たちの上のコイルに
一九四〇年の
熱い太陽があたる


半透明のカスケツト

煙のパレスタインを捻り
細ながいフラスコの影を横切る朝
眼はプリズムの向ふに
ミルクのネクタイを漂はせ
緑の声を
白い円筒に吊る


スコオルもなく
暗黒は孤島の周囲をのみ繞
私のポケツトのなかの
巧妙なマツチと
その高貴な火の菫よ

衰へた軟風とともに
僅かな砂を磨く
坐業者らの上にも
兇暴なストラタスが現はれ
従順な指に
薄いガラスが光る

眉の細い友よ
一九三九年はそれである
ちいさな栓をとり
螺旋をぬき
非常に軽く
ドアを押してよろめく


溶ける貝殻

白い網の向ふに
ザラ紙の時計は乾き
ワツクスの雲が砂の上に垂れてゐる
それは朝の十時である
ピアノが
波に沈む
ゴムの椅子に坐り
長い間
コツプのなかの溶液を揺つてゐた王妃よ
その木製のシヤツのラベルの
緑のために
太陽は
今日も雑草の上にある

勢よく
水のシヤツを着て
ガラスを破り
透明な匝線の影に立ち止まる
このセロフアンに包まれた
エナメルの百合は
エヂプトの旅行である

固い水のスパイラル
一直線の砂を握り
海と
信号旗にレンズを合せ
明るいソオダ水のなかに傾斜する


明るいドリアン

葡萄のくねる朝
太陽はイラ草の上にねばり
リネンの背中を温める
油のなかの
軽い仮設は
フエニキアの楽器のごとく光り


胡桃の皮を剥ぐ娘らの頬と
豌豆を浸すとき

熱いカメオを頸に吊り
軟風とともに
未熟なマンゴオを愚弄する

この透明な LAMPON のために
菫を踏み
古風な計量器によりかかり

恐怖よりもはやく
瞼をかすめる
一本の吸管を粉碎する


鉛のラケツト

風がタオルの形にひるがヘる
緑の歯磨を舌に塗り
太陽に絶対の背中を光らせる
円筒の日
軟かな矩形を押し
異教徒の固いわらひにみちて
GOTHAM の石畳ですべり
わづかに釦をくはヘ
灌木のなかのシラスを見る

肥えた思考は進まず
レトルトは盛んなアヒルの唄にあふれ
突風の中で卵を踏む
僕の兇暴なネクタイのために
ガラスはアセチレンの匂ひがする
溶ける葡萄
よろめく空虚
明るい縞にもたれ
熱いシヤボンに頬をつけ
半透明の十時に
軽いミシンの音をたて
君の細いコイルのために
翼あるリキユウルに沿つてくねる
Cordelier の敢然たる意志とともに


泥のブロオチ

翼あるコツプとともに
アメリカの太陽に向ひ
思考の表面がキヤベツのやうに縮れる
ステインレスの風が吹く日
君のスウツは白粉をつけたタキタスの笑ひである
ライタアを出してガラスを割り
指をまげて立ち上る
そして少し成功する
ニユウヨオク・タイムスの上に雲が出る
軟らかなベレにもたれて
中心を外した水滴にあひ
際限のない生長の空虚のなかで
僕のために僕のために
一束の菫の花が
白いスウツのボタンホオルに
恋の形に明るくなる
若いカンパニイの
ヒヤシンス色のガラスのために


生きたキヤンドル

固い背中を叩き
黒檀の円柱のそばを過ぎる
岩の丘をななめに区切る黒い眠りの午後
太陽は野獣の匂ひがする


木綿の布を肘に垂れ
燃える砂のなかに
強烈な花を踏み
緑の舌をまげるひと

蒸発はセロフアンの網を頸に飾る
カラカバ人の皿をたたき
風化する貝の上を
透明な蜥蜴とともにすべる


鉛筆の生命

木製の帽子をかぶり
石膏の棒にもたれ
橄欖の木と紅い雲を眺めよ

星にみちた頭は重く
ベトンの岸を漂ひ

ピラミツドの上の
雲母の手套のやうに
午後を光る

衰へた掌のなかに
緑の瞼は眠り

大理石のボオトのなかに
ガラスのやうに
西に向つて横たはる

あ ここには
最早なにもない

一本の針金に貫通された
ポエジイの淡い影が
海にうつり

孤独な一匹の
雲雀のやうに

顫へる鈎によつて
硝子質の音とともに
未来に向つて引き裂かれる


休暇のバガテル

水の帽子をかぶり
光る砂の上に
砕ける風の網とともに
透明な思考がちぢれる日

ねぢれた椅子にもたれ
パインアツプルを喰ひ
GOTHAM BOOK MART の
厚いカタログを読む


強烈な午後の
固い影にコルクは乾き
絶望はシヤボンを濡らした

非常にはやく
ガラスの水差しをさげ
黒い階段をのぼり
アヒルの孤独をからかふ

君の頸はほそく
カバンの上にかたむき
華奢なコツプのために
いきなり躓く


透明なオブヂエ

軽い朝
扉がしまり
栓がぬける

フラスコの中の
固い詩人
転る銀貨

雨が
レンズをたたき
スコツプがはねかへる

ペンキの横の
ラケツト
あるひはトランク

ベリベリイのわらひは
退屈なパイプとともに
ベトンの坂を去る

金網に遠く
焼ける思ひに縮れ
コリントの柱に写る

非常に白い
インポツシブルな
写真師の円屋根